「キセキ -あの日のソビト-」は2017年に公開された日本映画で、実在の人気覆面バンドGReeeeNの成り立ち、および彼らの代表作「キセキ」の誕生秘話をドラマティックに描いた青春映画です。
GReeeeNのリーダーHIDEと、彼の兄でありグループの楽曲プロデュースを手がけるJIN。物語はこの兄弟二人を中心に描かれています。
そんな今作を手がけたのは監督の兼重 淳。
「海よりもまだ深く」「そして父になる」などの是枝裕和監督作品で助監督を務めることも多く、2019年にはベストセラー作家・重松清の短編集を原案とした「泣くな赤鬼」で監督を務めています。
また、映画のタイトルになった「ソビト」という言葉は漢字に直すと「素人」「空人」と書き、自由に新しいことに挑戦していく人、という意味を込めたGReeeeNによる造語だそうです。
まだ夢を掴む前の若者達(ソビト)の葛藤や決意を爽やかな曲調に載せて描いた今作の魅力を、是非ご覧下さい!
キセキ -あの日のソビト- あらすじ
森田仁(以下、JIN)はメタルバンド・High Speedのリーダーでボーカルを担当しています。ある日のライブで大暴れをしたJINは、興奮のあまりステージ上で観客に怪我をさせてしまいました。
負傷した観客は病院に運び込まれましたが、そこは運悪く、JINの厳格な父・誠一が勤務する病院でした。
帰宅後、JINは激昂した誠一から血が出るほど激しい鉄拳を受けます。昔から腕っ節も強いJINですが、森田家の絶対君主である父・誠一にだけは決して頭が上がらないのです。
ようやく父から解放されて自室に戻ると、そこでは弟の英明(以下、HIDE)が机に向かっていました。
HIDEは医学部を目指して1浪中の身。中学、高校と兄弟二人で音楽にのめり込んでいた時期もありましたが、今は大事な受験を控えています。音楽活動を完全にストップしたHIDEは受験勉強に集中していました。
そしてついに訪れた試験当日。毎日猛勉強を重ねていたHIDEですが、その甲斐も虚しく、今年も本命の国際医科大学を落ちてしまいました。
その日は久々に姉のふみを含めた家族皆で夕飯を囲み、HIDEの祝賀会をするつもりでしたが、せっかくのすき焼きもまるでお通夜のようです。
そして、そこにJINの姿はありません。本格的に音楽活動に打ち込んでいたJINは、その日もライブで家に戻って来なかったのです。
話は変わり、父親の誠一は日々、心臓外科医という自分の仕事に精を出していました。とりわけ最近の悩みは、先日入院してきた拡張型心筋症という難病を抱えた患者・櫻井結衣のことです。
まだ高校一年生だという彼女に誠一は優しく寄り添います。家では息子達に厳しい顔を見せる誠一ですが、仕事場での彼は患者への思いやりに溢れた医者なのです。
さて、落第し2浪目に突入したHIDEはというと、同じく2浪目へ突入した友人・ナビと予備校で講義を受けていました。
講義終了後、HIDEは行きつけのHMV(イギリス発のレコード販売店)で海援隊の「贈る言葉」のCDを買います。レジを見ると、最近アルバイトとして入ってきた娘がいました。HIDEはCDの会計時に彼女に思い切って話しかけてみます。気になっていた彼女…理香とはどうやら馬が合うようです。
一方、JINにも嬉しいニュースがありました。ライブ終了後、プライマルミュージックのディレクターである売野哲夫から直接メジャーデビューの誘いを受けたのです。
音楽で身を立てて父を見返したいJINは自宅に戻ると父に報告しましたが、逆にまたもや怒られてしまいます。更には口答えした為に居間の日本刀まで抜かれてしまう始末です。
その場は事なきを得ましたが、結局JINは家を出て一人暮らしをすることにしました。
父・誠一とJINの関係はこじれましたが、High Speedのメジャーデビューは正式に決まりました。JINは景気付けに家賃12万円もする高い部屋を借りて本腰を据え、家に残してきた機材は後日HIDEが持って来てくれました。
その後、HIDEは理香と自然と付き合うようになりました。しかし恋愛は順調な反面、医学部志望のHIDEの成績は一向に上がりません。
そこでHIDEはより合格率の高い歯学部への進路変更を考えます。母に相談すると、ずっと歯の不調に悩んでいた母は喜んでHIDEを応援し、父・誠一もまた反対はしない様子です。
こうしてHIDEは目標を医学部から歯学部へと改めたのです。
その頃、JINのメタルバンド・High Speedは念願のメジャーデビューを飾りましたが売り上げは伸び悩んでいました。
やがて2ndシングルの為に何度もダメ出しを繰り返すうちにメンバー内で方向性の相違が生まれ、バンド内の雰囲気が悪化していきました。また、要望どおりの曲を作ってもプロデューサーの売野には酷評され、ついにJINはキレてしまいます。
これを機に辞めると言い出すメンバーも現れ、High Speedは事実上の空中分解をしてしまいました。
さて歯学部志望へと進路を変えたHIDEですが、昨年の雪辱を晴らすべく成績を伸ばし、今度こそ合格を勝ち取りました。去年と同じく姉は家に戻ってきて、皆が揃った夕飯のすき焼きは嬉しい祝勝会となりました。
こうしてHIDEの受験は終わりを告げ、彼は封印していた音楽を再び始めることに。
塾時代からの友人であるナビに加え、沖縄でDJをしていたクニ、カラオケが上手いソウと意気投合し、皆でヴォーカル・グループを結成することにしました。
4人は早速キャンパス近くの河川敷で曲を作り、練習に打ち込み、そしてとうとう1曲めのオリジナルソング「声」が完成しました。問題は誰に編曲をしてもらうかですが、HIDEは迷いなく兄のJINの家に向かいます。
JINはHIDEから渡されたデモテープを聴き、そしてすぐさまアレンジに取り掛かりました。テープから聞こえたHIDE達の曲に強い才能を感じたからです。
HIDE達のグループ名は新人・未熟者という意味を込めて「Green Boys」に決定しました。彼らはこうして完成した曲「声」を披露するため、友人や恋人の理香を呼んでライブを行いました。
結果は大成功。ライブにはJINも来て、共に喜んでくれました。
自身のバンドは失ってしまったJINですが、彼は編曲の他にプロデューサーとしての手腕も秘めていました。
HIDE達の才能に賭けたJINはプロデビューに乗り気でないHIDEを説得します。また、プロデューサーの売野にもHIDE達が学業にも専念でき、父親にバレることが無いよう前代未聞の「覆面アーティスト」として売り込みます。
JINが何度も何度も交渉し調整した結果、4人はグループ名を「GReeeeN」と改め、そして1stシングル「道」でのデビューが決まりました。
GReeeeNの成功はJINの人生に新しい光を与えました。
High Speedのように自らが舞台の上で戦うのではなく、HIDE達4人の縁の下の力持ちとなることで今まで気付かなかった自分の才能を発揮できる喜びと、HIDE達と一緒なら音楽業界でやっていけそうな手応えを感じたのです。
1stシングルの発売日。母や姉は素直に喜んでくれましたが、JINとHIDEが本当に認めさせたいのは父の誠一でした。父を説得し、乗り越えることで本当の意味で将来が開けると信じていたのです。
JINは父・誠一の病院へ行き「音楽で心のドクターになる」と宣言します。
ですが音楽にのめり込むあまり成績が悪化していたHIDEは逆に父から叱責されて、一時はGReeeeNの活動を休止することも考えます。更には彼女の理香とも喧嘩して、この時期疎遠になってしまいました。
危機感を覚えたJINは不器用ながら弟HIDEに「お前には才能がある。俺と一緒が嫌でもGReeeeNは絶対続けろ」と激励します。兄の言葉に奮い立ったHIDEは仲間とJINに感謝し、2曲目の製作に取り掛かることにしたのです。
何度もリテイクを繰り返し、そして数ヶ月後、ようやく2曲目のシングルが完成しました。
曲名は「キセキ」。思いを込めた「キセキ」は瞬く間に大ヒットし、何とオリコン1位を獲得しヒットチャートを総舐めにしました。そしてHIDEは父・誠一に今度こそ音楽活動を認めてもらうため、改めて頭を下げたのです。
一方、誠一は結衣のこれ以上の病状の悪化を防ぐため、彼女の拡張型心筋症の手術に踏み切る決意をしました。
自身の病状に不安が隠せない結衣。ですが結衣はGReeeeNの「キセキ」を聴くと、そこから勇気をもらったと言い誠一の手術を受けることにしたのです。
さて、時は進んでHIDEの大学2年の夏休み。父・誠一から音楽活動の許可を貰ったHIDEはJINと合宿して音楽作りに励むため、機材を積んで出かけようとしていました。出掛ける前に二人は誠一からこう呼びかけられます。
「お前ら、GReeeeNって知ってるか?お前らもGReeeeNみたいな曲を作れるようになれ」
図らずして父から自分達の音楽を褒められたJINとHIDE。
二人はついに父に認められ、晴れ晴れとした気持ちで仲間との合宿へ向かうのでした。
「キセキ」が生まれてから数年。HIDEは無事に国家試験に合格し、歯科医となった今も覆面アーティストとして活動し二束のわらじで忙しい毎日を送っています。
父・誠一もまた結衣の手術に無事成功しました。難しい手術でしたが結衣は順調に回復し、退院後は美大へと進学しました。
かつて結衣の決意を促したGReeeeNは、今では誠一の心の支えとなっているのです。
キセキ -あの日のソビト-キャスト
JIN(松坂桃李)…メタルバンド・High Speedのリーダーでボーカル。やがてGReeeeNの楽曲アレンジ兼プロデュースを務める。
HIDE(菅田将暉)…JINの弟。歯科医師を目指しながらGReeeeNリーダーとなる。
誠一 (小林薫)…JINとHIDEの父親。厳格な父であり熱心な医者。
理香(忽那汐里)…HIDEの彼女。レコード店のアルバイトを通じてHIDEと知り合う。
結衣(平祐奈)…誠一が担当する難病患者の少女。
ナビ(横浜流星)…navi。GReeeeNのメンバー。
成田凌(クニ)…92。GReeeeNのメンバー。
杉野遥亮(ソウ)…SOH。GReeeeNのメンバー。
彼らの壁となる父親の誠一を演じた小林薫さんは昭和の男を感じさせる厳しい父親像を心がけたそうです。小林さんがスタンバイに入ると異空間のような緊張感があったと、JIN役の松坂桃李さんは語ります。
その松坂さんはJINに対して親の反対を押し切って芸能界に入った自分と重なるものを感じていたそうで、自分が親に認められたい気持ちをずっと持っていたことに改めて気づかされたとのこと。
また、HIDE役の菅田将暉さんは今作について「二兎を追う物が二兎を得た凄い人達の話。でも本当に凄いのは、それが両親のことを一番に考えた選択だということ」とコメントしてます。
物語の主要人物となるそれぞれが、今作に対してただのサクセスストーリーでは終わらない家族の繋がりを感じ取っていたようです。
キセキ -あの日のソビト-ネタバレ感想
✨✨祝✨✨先日の報知映画賞に続き、菅田将暉さんが「第30回日刊スポーツ映画大賞」の【主演男優賞】を受賞されました❗️史上最年少の受賞とのこと。本当におめでとうございます‼️
※『キセキ ーあの日のソビトー』ほか4作品での受賞https://t.co/rhXGFkCqI1— 映画『キセキ ーあの日のソビトー』公式 (@kiseki_movie) December 5, 2017
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今日で #キセキあの日のソビト 公開から3年
オープニングのJIN@桃李くんの衝撃感激は凄かった
挫折や葛藤、優しさ温かさ絆を感じる素晴らしい作品
エンドロールの優しい眼差しも大好き
(番宣が旅人と重なり最高のビジュでの公開関連イベントも神)
[2017年1月28日公開]#松坂桃李 pic.twitter.com/9nqb6TGo5r— ささみず (@sasaMi524Ta823) January 28, 2020
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◎映画「#キセキあの日のソビト」
見やすさ ☆☆☆☆☆
満足度 ☆☆☆☆☆
おすすめ度 ☆☆☆☆☆#GReeeeN の結成からデビューまでの軌跡を映画化した作品。
色物だと思ってあんまし期待していなかったけど、人生の選択の迷いや葛藤が描かれていて尚且つストーリーがしっかりしていて良かった。 pic.twitter.com/bBXsODDm3d— そうムビ (@socharo_movie) December 23, 2018
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物語の作りが些か王道すぎるとの指摘があるものの、やはり若者が夢を追いかけ、最後に「人気覆面アーティスト」「歯科医師との二束のわらじ」という半ばノンフィクションにして極めて稀なハッピーエンド展開は、映画を鑑賞した人々の憧れと共感を強く引き寄せたようです。
また、音楽の力、家族や仲間との絆を感じさせる描写も多く、それらが謎の多いGReeeeNおよび「キセキ」の成り立ちと絡み合って描かれている様子は、GReeeeNのファンは勿論のこと、今作を通じて彼らの魅力を知った人々にも好ましく受け止められています。
GReeeeN特有の爽やかな曲調と歌詞が今作のきらめく様な青春映画ぶりに見事にマッチしており、鑑賞しやすい軽さながら視聴後の満足感は充分あります。
音楽と共に暖かい気持ちになりたい方にはとってもおすすめの映画です!
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